備忘録

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ピンロックシートとは

このところ寒くなってきたせいか、検索サービスからピンロックシートの情報を探してこのページにたどり着く人が増えてきたようだ。そのため少し、内容を追加しておく。

 

今まで使っていたヘルメットは、黒のフルフェイスだがもう4年ほど経って飽きてきたことと、重量が重い事と、何かの記事で見たがヘルメットの色が白だと周りからの視認性がかなり上がるということで、そろそろ買い替えてみようかと思っていた。

 

色々とヘルメットの情報を調べていたところ、「ピンロックシートに対応」というような売り文句がちらほらと見つかった。そして対応済みであることが非常にアドバンテージである書き方で、優れものであるがごとく説明されている。ピンロックシートについて知識が無かったので、調べてみた。

 

要は、フルフェイスヘルメットを中心としたヘルメットのシールドの曇り止め対策品で、かなり性能がいいと評判のものらしい。

 

夏以外ではフルフェイスヘルメットのシールドは曇るもので、特に冬に停車した時は自分の呼気の湯気ですぐに前が見えなくなる。そのため特に冬は停車時にはシールドは全開にし、走行中にも1センチ程度は空けて曇り止めにしている。ところがこのシートをシールドに組み合わせると、曇らなくなるとのことだ。

 

曇り止めについては、専用の曇り止め剤、石鹸、ツバなど色々な方法使ったことがある。スキューバダイビングをしていた時は、マスクのレンズにツバとか海藻をこすり付けると曇り止めになった。ただしどれもが有効時間が非常に短く、バイクでの使用には不十分だ。もし長時間、本当に曇らないなら画期的だ。

 

ピンロック社というオランダの会社が、このピンロックシートの特許を持っていてベルギーで製造し、各ヘルメットメーカーにOEMとして提供、また自社ブランドで販売しているようだ。 

 

構造は、二重ガラスのように現行のシールドの内側にもう一枚のシールドを、極薄い隙間を開けて重ねるもの。これで冷たい外気が内側のシールドに直接触れることがないため曇らないという。以下はヘルメットのシールドとピンロックシートを上からみた図。

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冬には住宅用の一枚ガラスには大量の結露が発生するが、二重ガラスだとほとんど発生しない。薄い空気層が、断熱材となる。シートの縁には厚さ1~2ミリ程のシリコンの縁取があり、これで空気層を維持している。そしてピンロック対応ヘルメットとは、外側にあるシールドに、後付けする内側のシールドを固定させるための「二つのピン」が最初から準備されていること、を意味する。

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スリット: スリットは、インサートレンズをフェイスシールドとピンの間で安定してしっかりと保ちます。

シリコーンシール: ヘルメットのフェイスシールドとピンロックインサートレンズの間にダブルシールドシステムを作成します。

乾燥親水性技術: 水分を吸収する膜表面のような乾燥親水性技術 

上記のピンロック社の説明によると、乾燥親水性テクノロジーというのも使用しているとのことで、単に二重ガラスのようにしたという単純なものではないのだろう。撥水だと水蒸気の粒がシールド表面で玉になりツブツブで視界が遮られるが、親水であると水蒸気の粒がなめらかに広がって視界を防げないといった親水性の高いTOTOのハイドロテクト技術のようなものだろう。ガラコのように雨粒を撥水する方法は水滴を走行風で吹き飛ばすことが目的で、そのため界面活性剤で水蒸気の粒をコロコロ弾くようにする。しかしガラコ塗布直後の撥水が非常強い状態でワイパーを使うと、ガラスに微細な水滴がたくさんついて視界が遮られてしまう。さらにフルフェイスヘルメットの場合、内部に走行風は期待できず、また水分量も車とは比較にならないほど少ないので、逆に親水性を高め付着した水蒸気を粒にせず広げて視界を確保する、といった理屈なのだろうか。

 

さて能書きはここまでにして、実際に冬の朝に使ってみた。最低気温はマイナス2度の、震えあがるような日の朝8時にバイクに乗った。気温は0度前後だろうか。

 

前のフルフェイスならシールドを下そうものなら1秒で真っ白に曇ったものだが、ピンロックシート付なら全く曇らない。曇らせようと思って、止まっている時にわざとシールドに息を吹きかけても全然曇らない。時間が経っても変化なし。これはすごい。看板に偽りなしだった。一部のネット情報によると、夜になると対向車のライトが微妙に二重にずれるとの話があったが、自分は全然気にならない。曇り止めの塗り薬などと異なり、もう二シーズン目になるがメンテナンスフリーなのに効果は全然衰えない。

 

ただしネット情報によれば、汚れの洗浄を目的に水をジャブジャブとかけて洗うと、二重シールドの隙間に水が入ってくる場合があるらしい。自分は雨ではほとんどバイクに乗らないが、小雨などでは全く問題はなかった。清掃は濡れ雑巾で拭く程度にしておいた方がよさそうだ。なお隙間に水が入ったとしても、ピンロックシートは固定に接着剤などは使用していないので、ピンから外して水を拭くだけでOKだ。

 

費用は2,000~4,000円程度とばらつきがあり少々お高いが、特許料が含まれているのだろう。だから対応していない(ライセンス契約をしていない)メーカーやモデルのヘルメットには取り付け自体ができない。しかしここまで完全に曇らないなら、価値は十分あると思う。ヘルメットメーカーにとっても、「対応品」は十分な売り文句になる。