備忘録

しわ無し脳みそのために...

三本和彦氏と「新車情報」

以下の記事によると、自動車ジャーナリストの三本和彦氏が亡くなったらしい。若い頃TVKテレビの「新車情報」を楽しく見せてもらった。消費者目線に立った、メーカーに媚びない、歯に衣着せぬ物言いが面白かった。本当なら、残念なことだ。昭和の硬骨漢がまたひとり旅立ってしまった。

以下の記事は「クラシックカーディーラーズ」と一緒にしていたものだが、同氏追悼のため、分けることにした。合掌

 

日本に車番組はあるが、金持ち風のスノッブが高級車や外車の能書きを垂れる番組は嫌味だし、また車以外に興味のない社会性のない連中が集まるような番組も見る気がしない。または芸人が下手なおふざけで笑いを取ろうとするのも、飽き飽きしてうんざりだ。ところが以前UHFのTVKテレビ神奈川)でやっていた「新車情報」は司会が三本和彦氏だった時は、普通の庶民がメーカーに言えない質問やコメントをあくまでも庶民目線のべらんめえ口調で辛辣、辛口に突っ込んでいた硬派な番組だったので、毎週楽しく見ていた。新車紹介が基本的な内容で、偉大なマンネリと三本氏も称していたが、それでだけでなく新車紹介をせずに特集を組むこともあった。

    庶民目線を忘れない三本氏であったが、日本自動車殿堂に入るほどの有名人であり専門知識も十二分にあるので、切り込まれる側(国産メーカーは開発責任者、外車は輸入会社代表等)も覚悟をし首を洗って出演していて、そのやり取りも楽しかった。大人の事情で普通の評論家が聞けないような質問を行い、メーカー側が答えに窮するといったシーンがしばしばあり、本音のやり取りが聞けて面白かった。かといって今どきのユーチューバーのように視聴者に迎合するわけではなく、社会人である自動車ユーザーとしてあるべき態度を問うこともあった大人の番組だった。

    マイナーで経営の苦しいUHF局のテレビ神奈川の番組ながらほぼ全国でネットされており、同局の全番組中で当時トップクラスの視聴率を誇ったらしい。メジャーなキー局にしてみれば、自動車メーカーはCMを打ってくれる最上得意顧客なので、そのお客様を番組中で答えに窮するほど突っ込む、という番組はできない。新車情報の場合も、独立系の曙ブレーキの懇意にしていた経営者が助けてくれて、神奈川に事業所のある自動車部品メーカーにスポンサーになるよう声をかけてくれたという。某国営放送では商品名や会社名を出した番組はできないといったそうだ。しかしイギリスの国営放送BBCでは1977年から続く自動車番組(トップギア)もあるので、要はやる気がないということだ。番組内で三本氏が自分で言っていた「ゲリラ番組」というは言い得て妙だが、だからこそ視聴者の支持を集め、1977年から2005年まで27年9か月(放送回数1,448回以上)という長寿を誇った番組だった。

    しかし同氏の新車情報に対するコラム<新車情報よもやま話>のアーカイブを読むと、TVKの経営者は主要株主である神奈川県、横浜市、神奈川新聞から天下ったやる気のない人々で、さらにしばしば変わったそうだ。どういう状態だったかは想像に難くないが、そういう本気でない局の方針との問題で三本氏が引退してしまい、後番組が続いたが切込みが無くなって見なくなってしまった。特別の階級や、いかにも社会性を持たない人や、お笑い番組でなく、専門知識のバックグラウンドがあったうえであえて庶民目線の内容を狙った同番組に親しみが持てで楽しかった。また同様の番組をやってほしいものだ。

 テレビ神奈川 新車情報アーカイブ

 

    そのほかにはBS朝日でやっていた番組「昭和の車といつまでも」をみていたが、先日打ち切りになってしまった。ネタが切れてきたことと、内容がマンネリになってしまって、飽きられたのかもしれない。最も知りたかった「部品の入手ができない製造中止の車をどうやってメンテナンスするのか」といった情報が全く紹介されていなかった。「クラシックディーラーズ」でエド、アント、エルビスがやっている部分がすっかり抜け落ちているので、自分だけでなく不満が残る視聴者が多かったと思う。特集などもなかったし、センチメンタルでノスタルジックな車の紹介だけの繰り返しでは飽きてしまうので、もっと時間をかけて週一でなく、月一とかで部品の入手からレストアの工程まで見せるような内容にしたらよかったと思う。

    日本でも名車再生やまた新車情報のような番組をやってもらえないものだろうか。